Debian 13「trixie」リリース
OSSが進化し続ける理由

2025年8月、オープンソースの代表的なLinuxディストリビューション「Debian」の新バージョン、Debian 13(コードネーム「trixie」)が正式にリリースされました。Debianは“Universal Operating System”を掲げ、サーバーからPC、クラウド環境まで幅広く使われている基盤的な存在です。

今回のリリースでは、約14,000もの新しいパッケージが追加され、44,000以上が更新されています。主要ソフトウェアも最新化されており、LibreOfficeやPostgreSQL、Python、OpenJDKといった業務に欠かせないソフトも含まれます。さらに、クラウド環境向けに最適化されたイメージも提供され、Amazon EC2やMicrosoft Azure上でもすぐに利用できるようになっています。

注目すべきポイントのひとつは「アーキテクチャ対応の広がり」です。今回から64ビットRISC-Vが公式サポートに加わり、最新の半導体アーキテクチャにも対応可能となりました。一方で、古いi386(32ビットIntelアーキテクチャ)はサポート対象から外れており、時代の流れを象徴しています。

また、品質面でも大きな進歩がありました。パッケージのビルド結果をバイト単位で再現できる「リプロデューサブルビルド」がさらに推進され、セキュリティや信頼性が向上しています。加えて、78の言語に対応し、より幅広いユーザー層が利用しやすくなりました。

ここで押さえておきたいのは、OSS(オープンソースソフトウェア)が単なる“無料の代替品”ではないという点です。クラウドやサーバー基盤としてDebianやその派生(Ubuntuなど)が広く利用されている背景には、安定性と透明性があります。商用製品に依存せず、世界中の開発者が改善を重ねる仕組みこそが、この持続的な信頼を支えているのです。

Debian 13「trixie」の登場は、OSSが今なお確実に進化し続けていることを示しています。AIやクラウドの話題に目が行きがちですが、その基盤を支えるOSの変化を理解しておくことは、テクノロジーを活用する上での大切な要素といえるでしょう。

用語解説

  • Debian(デビアン)

世界中の開発者が協力して開発・保守しているオープンソースのLinuxディストリビューション。信頼性が高く、Ubuntuなど多くの派生OSの基盤となっている。

  • Linuxディストリビューション

Linuxカーネルに加え、アプリケーションやツールをまとめて配布する形態。利用者はすぐにOSとして使える。代表例はDebian、Ubuntu、Red Hatなど。

  • パッケージ

ソフトウェアを配布・管理する単位。Debianでは数万以上のパッケージが用意され、必要な機能を組み合わせて利用できる。

  • RISC-V(リスクファイブ)

オープン規格の新しいCPUアーキテクチャ。ライセンス料が不要で自由度が高く、次世代の半導体設計で注目されている。

  • i386

Intelが開発した古い32ビットCPUアーキテクチャ。かつて広く使われたが、現在は多くのOSでサポート対象外となりつつある。

  • リプロデューサブルビルド

同じソースコードからビルドしたプログラムが、バイト単位で完全に同一になること。改ざん検出やセキュリティ強化につながる。

  • クラウドイメージ

AWS(Amazon EC2)やMicrosoft Azureなどのクラウド環境ですぐに利用できるように最適化されたOSの配布形式。

  • OSS(オープンソースソフトウェア)

ソースコードが公開され、誰でも自由に利用・改変できるソフトウェア。透明性が高く、世界中の開発者が改善を続けている。

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執筆者: 綾部 一雄(株式会社クロスディーズ 代表取締役)

ネットワーク維持管理、システム開発、ベンダー調整のスペシャリスト。前職では、600名以上の介護事業所で、介護事業用ソフトの導入や契約の電子化、テレワークシステムの導入等に幅広くに携わる。2021年より、株式会社佐々木総研にて業務効率化のためのロボットや最新技術を活用した開発を行っている。