Googleが新たに公開した「LangExtract」は、AI活用を支えるオープンソースのPythonライブラリです。名前だけ聞くと難しそうですが、役割はシンプルで、「大量の文章から欲しい情報を抜き出し、整理してくれる部品」と考えるとわかりやすいでしょう。
現代の業務では、顧客フィードバック、契約書、報告書、臨床記録など、膨大なテキストデータが日々生まれています。従来は人が読み込むか、特注のプログラムを作るしかありませんでした。LangExtractはこれを効率化し、AIを使って必要な情報を正確に抽出し、しかも出どころ(元の文章のどこから取り出したか)まで明確に示してくれます。
さらに特徴的なのは「構造化された出力」を得られる点です。単に文章を切り取るのではなく、表形式やリスト形式など、後で活用しやすい形にまとめてくれます。GoogleのGeminiをはじめとする大規模言語モデル(LLM)を活用しつつ、誤りを減らす仕組みを備えているのもポイントです。
活用シーンは幅広く想定できます。たとえば、金融分野では大量のレポートからリスク関連の記述を自動抽出、医療では診療記録から薬の処方情報を整理、広報ではニュース記事から自社関連の動向だけを拾う、といった具合です。これまで人が時間をかけていた「探してまとめる」作業を効率化するのが、LangExtractの価値といえるでしょう。
ただし、LangExtract自体が「AIを作る魔法のツール」ではありません。あくまでAI活用を支える部品であり、成果はどのようなデータを扱い、どんな目的に使うのかによって決まります。OSSである以上、導入にはセキュリティや保守の観点も欠かせません。
LangExtractの登場は、AI活用が「より具体的な用途にあわせて調整・最適化される」方向へ進んでいることを示しています。自社にとって必要な情報は何か、その抽出や整理にAIをどう役立てるのか。そうした視点を持つことが、これからますます重要になるでしょう。
用語解説
- LangExtract(ラングエクストラクト)
Googleが公開したオープンソースのPythonライブラリ。大量のテキストから必要な情報を抽出・整理する機能を持ち、AI活用を支援する“部品”の役割を果たす。
- オープンソースソフトウェア(OSS)
ソースコードが公開され、誰でも自由に利用・改変・配布できるソフトウェア。コストを抑えて最新技術を取り入れやすいが、サポートやセキュリティ対応が利用者に委ねられることもある。
- Python(パイソン)
世界的に広く使われているプログラミング言語。シンプルで学びやすく、AIやデータ分析の分野で特に人気が高い。
- ライブラリ
よく使う機能や処理をまとめた“部品”のようなプログラム。開発者はゼロから作る手間を省き、効率的にシステムを構築できる。
- 大規模言語モデル(LLM)
膨大なテキストを学習して、人間のように自然な文章を理解・生成できるAI。ChatGPTやGeminiなどが代表例。
- Gemini(ジェミニ)
Googleが開発した大規模言語モデルのファミリー。LangExtractはGeminiをはじめとするモデルを利用して、精度の高い情報抽出を可能にしている。
- 情報抽出(Information Extraction)
膨大な文章の中から必要なデータだけを抜き出して整理すること。AI活用の基本的な技術の一つであり、文書管理や検索の効率化に役立つ。
- 構造化された出力
抽出した情報を表やリストなど、後から活用しやすい形で整理すること。分析やレポート作成に使いやすくなる。
 
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				執筆者: 綾部 一雄(株式会社クロスディーズ 代表取締役)
ネットワーク維持管理、システム開発、ベンダー調整のスペシャリスト。前職では、600名以上の介護事業所で、介護事業用ソフトの導入や契約の電子化、テレワークシステムの導入等に幅広くに携わる。2021年より、株式会社佐々木総研にて業務効率化のためのロボットや最新技術を活用した開発を行っている。
