Power BI初心者がつまずくポイント3選
第3回:リレーション編 ~Power BIの分析結果を左右する“見えない仕組み”とは~

■はじめに

第1回ではPower Query、第2回ではDAXについて紹介しました。Power BIでは、データの加工・整形を行うPower Queryと、分析や計算を行うDAXが重要な役割を担っています。

しかし、Power Queryでデータを整え、DAXを正しく記述しても、

  • 売上金額が合わない
  • フィルターが効かない
  • 集計結果が重複して表示される

といった問題が発生することがあります。

その原因として意外と多いのが、今回紹介する「リレーション」です。

リレーションは、Power BIの分析を支えるデータモデルの中心となる仕組みです。

本記事では、初心者がつまずきやすいポイントを整理しながら、リレーションの基本的な考え方について紹介します。

■リレーションとは

リレーションとは、複数のテーブル同士を関連付ける仕組みです。
例えば、

  • 売上データ
  • 顧客マスタ
  • 商品マスタ
  • 日付テーブル

これらをつなぐことで、

  • 顧客別売上
  • 商品別売上
  • 月別売上

など、さまざまな角度から分析できるようになります。

Power BIでは、このリレーションが正しく設定されて初めて、フィルターや集計が期待どおりに機能します。

■初心者がつまずくポイント①

リレーションを設定すれば終わりだと思っている

Power BIでは、列同士をつなげるだけでは十分ではありません。
重要なのは、

  • どの列をキーにするか
  • 一対多(1:*)になっているか
  • 重複データがないか

です。
例えば、顧客マスタに同じ顧客コードが複数存在すると、正しいリレーションを作成できず、集計結果が期待と異なる場合があります。
リレーションを設定した後は、キー項目に重複がないかも確認しましょう。

■初心者がつまずくポイント②

多対多リレーションを安易に使ってしまう

Power BIでは「多対多」のリレーションも作成できます。
しかし、初心者のうちは安易に利用することはおすすめできません。
多対多では、

  • 数値が重複して集計される
  • フィルターの動きが分かりにくい
  • 原因の特定が難しい

といった問題が発生することがあります。
まずは「一対多」のリレーションでモデルを構築できないか検討することが大切です。
実務では、

  • 売上データ(明細)
  • 顧客マスタ
  • 商品マスタ
  • 日付テーブル

のように、中央に明細データ、その周囲にマスタを配置する構成がよく利用されます。
このような構成は「スター スキーマ」と呼ばれ、Power BIで推奨されるデータモデルです。

■初心者がつまずくポイント③

フィルターの流れを理解していない

Power BIでは、リレーションを通じてフィルターが伝わります。
例えば、顧客マスタで「A社」を選択すると、その条件が売上データへ伝わり、A社の売上だけが表示されます。
この「フィルターの流れ」を理解していないと、

  • スライサーが効かない
  • 意図しないデータまで表示される

といった現象につながります。
一般的には、

  • 顧客マスタ → 売上データ
  • 商品マスタ → 売上データ
  • 日付テーブル → 売上データ

のように、マスタ側から明細側へフィルターが流れます。
この向きが意図と異なる場合、期待した分析結果にならないことがあります。
データモデルビューでリレーションの向きを確認する習慣をつけましょう。

■実務でよくある失敗例

実務では、「DAXがおかしい」と相談を受けた結果、原因はリレーションだったというケースがよくあります。

例えば、

  • 日付テーブルと売上データが正しく関連付けられていない
  • 顧客マスタは「001」、売上データは「1」として登録されている
  • キー項目に重複がある

といった理由で、前年比較や累計が正しく表示されないことがあります。
このような場合、DAXを修正しても問題は解決しません。
まずはデータモデルを確認することが重要です。

■良いデータモデルが良いレポートを作る

Power BIは、

  • Power Queryでデータを整える
  • リレーションでデータをつなぐ
  • DAXで分析する

という三つの要素が組み合わさって成り立っています。
レポート画面で見える部分は一部に過ぎません。
分析結果の品質は、その裏側にあるデータモデルの品質によって大きく左右されます。
上級者ほど、レポート作成よりもデータモデルの設計に時間をかけています。

■まとめ

リレーションは、Power BIで分析を行うための土台となる機能です。
数字が合わない、フィルターが効かないと感じたら、まずはリレーションを確認してみましょう。
今回ご紹介した

  • Power Query
  • DAX
  • リレーション

は、Power BI初心者がつまずきやすい3つのポイントです。
一方で、この3つを理解できれば、Power BIでできる分析の幅は大きく広がります。
Power BIでは、
Power Queryで整える → リレーションでつなぐ → DAXで分析する
という流れが基本です。
焦らず一つずつ理解を深めながら、データを「見える化」するだけでなく、「活用できる分析」へとつなげていきましょう。シリーズを通して紹介した3つのポイントが、Power BI活用の第一歩となれば幸いです。

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執筆者: 村瀬 俊昭(株式会社クロスディーズ システム技術統括エンジニア)

前職では社内システムの運用、サーバーの監視、システム運用業務の構築、システム開発業務といった業務に幅広く携わる。2021年より株式会社佐々木総研にてロボットの設計・開発、社内SEとして従事している。釣りが趣味で、大のビール好き。