第2回:AI導入で見落とされがちなセキュリティと管理体制

生成AIを導入する際、多くの企業はAIの性能や機能に注目します。しかし、導入後に課題になりやすいのは「どう管理するのか」という点です。

無料の個人向けAI利用は避けたい

生成AIは無料でも利用できますが、企業利用では注意が必要です。

誰が使っているのか、何を入力したのか、どのように利用されているのかを把握できない状態では、会社として適切な情報管理ができません。

また、機密情報や個人情報が入力される可能性もあります。企業利用では、利用を認めるサービスや利用ルールを明確にし、管理できる環境を整えることが重要です。

AIの利用形態は大きく3つ

生成AIを選ぶ際は、性能だけでなく「どこまで管理できるか」という視点も大切です。
セキュリティや管理の観点では、生成AIの利用形態は大きく3つに分けて考えることができます。

①     提供元と直接契約する

AIの提供元と直接契約して利用する方法です。
代表的な例としては、OpenAIのChatGPT、GoogleのGemini、AnthropicのClaude、xAIのGrokなどがあります。
導入しやすく最新機能も利用できますが、企業として利用する場合は設定や運用ルールを十分に理解した上で利用する必要があります。

② 企業向け管理機能を備えたサービスを利用する

生成AIに加えて、利用者管理やログ管理などの企業向け機能を備えたサービスを利用する方法です。
Microsoft 365 Copilotは、大規模言語モデルとMicrosoft 365の権限管理やデータ保護機能を組み合わせて利用できる代表例です。
また国内でも、企業向けの利用者管理、ログ管理、入力制御、セキュリティ設定支援などを備えた生成AIサービスが増えています。
金融機関など、高い情報管理が求められる業種でも導入事例が見られますが、それぞれの業務や管理要件に合わせた運用が前提となります。
管理者の負担を軽減しながら生成AIを活用しやすくなるため、初期導入の選択肢として検討されることが増えています。

③ 自社専用環境でAIを運用する

専用クラウドや社内環境にAIを構築する方法です。
データを細かく管理できる一方で、導入コストや運用体制、専門人材の確保が必要になります。
なお、自社専用環境であっても設定ミスや権限管理の不備によるリスクは残ります。

企業向けサービスなら安心とは限らない

ここで大切なのは、企業向けの管理機能を備えたサービスを使えば、必ずセキュリティが高まり、費用も安く抑えられるというわけではない、という点です。
管理機能付きサービスを選ぶ場合は、「何が追加で守られるのか」と「どこから費用が発生するのか」を確認することが重要です。

例えば、生成AIサービスによっては、提供元と直接契約する場合でも、入力内容をモデル学習に利用しない設定を選べることがあります。
そのため、企業向けサービスを導入する際には、「学習利用されないから安心」という説明だけで判断するのではなく、それに加えてどのような管理機能やセキュリティ対策が提供されているのかを確認することが重要です。
また、サービスによっては基本料金に含まれる範囲と、RAGやAIエージェント、最新モデル利用などで従量課金になる範囲が異なります。
安全性、管理のしやすさ、使える機能、従量課金の範囲を理解したうえで、自社の目的に合うかどうかを判断する必要があります。

セキュリティは運用で決まる

どの方法を選ぶ場合でも、AIを安全に活用するためには社内ルールと社員教育が欠かせません。
例えば、
・AIに入力してよい情報
・利用できる業務範囲
・管理責任者
・アカウント管理方法
などをあらかじめ整理しておく必要があります。
また、どこまで活用を広げるのか、どの程度のリスクを許容するのかは経営判断でもあります。
生成AIの導入は、IT担当者だけの課題ではありません。

まとめ

AI導入では、性能や便利さだけでなく、セキュリティ、運用ルール、社員教育、管理体制をあわせて考える必要があります。
企業によって最適な選択肢は異なります。
だからこそ、サービス選定の前に「AIで何を実現したいのか」を整理することが重要です。

私たちも日々ご相談をいただきますが、同じ答えになることはほとんどありません。それぞれの企業に合った進め方があります。
「まず何から始めればよいのか分からない」という段階でも構いません。生成AI導入やAI活用をご検討の際は、お気軽にご相談ください。

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執筆者: 赤嶺 奈美(株式会社クロスディーズ プロジェクト進行統括マネジャー)

教育学部を卒業後、株式会社佐々木総研に税務課社員として入社。その後、総務課に異動し、請求業務や勤怠管理に携わる。2019年のICT活用推進課の発足時から所属し、社内文書の電子化やRPAの開発に取り組む。IT未経験から社内DXを推進した経験を活かし、現場視点での業務改善支援やローコードツール研修を担当している。