■はじめに
第1回ではPower Query、第2回ではDAXについて紹介しました。Power BIでは、データの加工・整形を行うPower Queryと、分析や計算を行うDAXが重要な役割を担っています。
しかし、Power Queryでデータを整え、DAXを正しく記述しても、
- 売上金額が合わない
- フィルターが効かない
- 集計結果が重複して表示される
といった問題が発生することがあります。
その原因として意外と多いのが、今回紹介する「リレーション」です。
リレーションは、Power BIの分析を支えるデータモデルの中心となる仕組みです。
本記事では、初心者がつまずきやすいポイントを整理しながら、リレーションの基本的な考え方について紹介します。
■リレーションとは
リレーションとは、複数のテーブル同士を関連付ける仕組みです。
例えば、
- 売上データ
- 顧客マスタ
- 商品マスタ
- 日付テーブル
これらをつなぐことで、
- 顧客別売上
- 商品別売上
- 月別売上
など、さまざまな角度から分析できるようになります。
Power BIでは、このリレーションが正しく設定されて初めて、フィルターや集計が期待どおりに機能します。
■初心者がつまずくポイント①
リレーションを設定すれば終わりだと思っている
Power BIでは、列同士をつなげるだけでは十分ではありません。
重要なのは、
- どの列をキーにするか
- 一対多(1:*)になっているか
- 重複データがないか
です。
例えば、顧客マスタに同じ顧客コードが複数存在すると、正しいリレーションを作成できず、集計結果が期待と異なる場合があります。
リレーションを設定した後は、キー項目に重複がないかも確認しましょう。
■初心者がつまずくポイント②
多対多リレーションを安易に使ってしまう
Power BIでは「多対多」のリレーションも作成できます。
しかし、初心者のうちは安易に利用することはおすすめできません。
多対多では、
- 数値が重複して集計される
- フィルターの動きが分かりにくい
- 原因の特定が難しい
といった問題が発生することがあります。
まずは「一対多」のリレーションでモデルを構築できないか検討することが大切です。
実務では、
- 売上データ(明細)
- 顧客マスタ
- 商品マスタ
- 日付テーブル
のように、中央に明細データ、その周囲にマスタを配置する構成がよく利用されます。
このような構成は「スター スキーマ」と呼ばれ、Power BIで推奨されるデータモデルです。
■初心者がつまずくポイント③
フィルターの流れを理解していない
Power BIでは、リレーションを通じてフィルターが伝わります。
例えば、顧客マスタで「A社」を選択すると、その条件が売上データへ伝わり、A社の売上だけが表示されます。
この「フィルターの流れ」を理解していないと、
- スライサーが効かない
- 意図しないデータまで表示される
といった現象につながります。
一般的には、
- 顧客マスタ → 売上データ
- 商品マスタ → 売上データ
- 日付テーブル → 売上データ
のように、マスタ側から明細側へフィルターが流れます。
この向きが意図と異なる場合、期待した分析結果にならないことがあります。
データモデルビューでリレーションの向きを確認する習慣をつけましょう。
■実務でよくある失敗例
実務では、「DAXがおかしい」と相談を受けた結果、原因はリレーションだったというケースがよくあります。
例えば、
- 日付テーブルと売上データが正しく関連付けられていない
- 顧客マスタは「001」、売上データは「1」として登録されている
- キー項目に重複がある
といった理由で、前年比較や累計が正しく表示されないことがあります。
このような場合、DAXを修正しても問題は解決しません。
まずはデータモデルを確認することが重要です。
■良いデータモデルが良いレポートを作る
Power BIは、
- Power Queryでデータを整える
- リレーションでデータをつなぐ
- DAXで分析する
という三つの要素が組み合わさって成り立っています。
レポート画面で見える部分は一部に過ぎません。
分析結果の品質は、その裏側にあるデータモデルの品質によって大きく左右されます。
上級者ほど、レポート作成よりもデータモデルの設計に時間をかけています。
■まとめ
リレーションは、Power BIで分析を行うための土台となる機能です。
数字が合わない、フィルターが効かないと感じたら、まずはリレーションを確認してみましょう。
今回ご紹介した
- Power Query
- DAX
- リレーション
は、Power BI初心者がつまずきやすい3つのポイントです。
一方で、この3つを理解できれば、Power BIでできる分析の幅は大きく広がります。
Power BIでは、
Power Queryで整える → リレーションでつなぐ → DAXで分析する
という流れが基本です。
焦らず一つずつ理解を深めながら、データを「見える化」するだけでなく、「活用できる分析」へとつなげていきましょう。シリーズを通して紹介した3つのポイントが、Power BI活用の第一歩となれば幸いです。
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執筆者: 村瀬 俊昭(株式会社クロスディーズ システム技術統括エンジニア)
前職では社内システムの運用、サーバーの監視、システム運用業務の構築、システム開発業務といった業務に幅広く携わる。2021年より株式会社佐々木総研にてロボットの設計・開発、社内SEとして従事している。釣りが趣味で、大のビール好き。
