無償で使えるRHEL
Red Hatが狙う開発者との新しい関係

2025年7月9日、Red Hatはビジネス開発者向けに「RHEL for Business Developers」を無償で提供すると発表しました 。RHEL(Red Hat Enterprise Linux)は、多くの企業システムやクラウド環境で基盤として利用されている商用Linuxです。これまで「安定性とサポートを兼ね備えた有償製品」というイメージが強かったRHELが、特定の層に無償で開放された点は注目に値します。

背景にあるのは、クラウドやAIの普及で「開発環境の多様化」が急速に進んでいることです。新しいアプリやサービスを素早く試すためには、実際の運用環境に近い形での開発が不可欠です。RHEL for Business Developersは、そのニーズに応える形で「本番同等の環境を無料で使える」道を開きました。

対象となるのは、個人の開発者やスタートアップ、小規模チームなどです。無償であるとはいえ、本番運用や大規模な利用には従来どおり有償サブスクリプションが必要です。今回の取り組みは、まずは「RHELを試しやすくすること」に主眼が置かれています。特にAIやデータ分析基盤を検証する際に、実際の商用環境と同等の環境をコストをかけずに使える点は大きな意義があります。

ただし、ここで重要なのは「無償提供=コスト削減」だけではありません。Red Hatにとっては、より多くの開発者にRHELを体験してもらい、将来的な企業導入につなげる狙いがあります。利用する側としては、これを「商用Linuxに触れやすくなった機会」として捉え、どの部分で実際の業務に活かせるかを見極めることが肝心です。

RHEL for Business Developersの登場は、商用Linuxをより柔軟に試せるようにした取り組みです。システム基盤に触れるハードルが下がり、開発から運用までの流れを意識しやすくなるでしょう。

用語解説

  • RHEL(Red Hat Enterprise Linux)

Red Hat社が提供する商用Linux。安定性と長期サポートに強みを持ち、多くの企業システムで利用されている。

  • Linux

世界中で利用されているオープンソースのOS。サーバーやクラウドの基盤として広く普及している。

  • サブスクリプションモデル

ソフトウェアを買い切りではなく、期間契約で利用する形態。RHELはサポートやアップデートを含めて提供される。

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執筆者: 綾部 一雄(株式会社クロスディーズ 代表取締役)

ネットワーク維持管理、システム開発、ベンダー調整のスペシャリスト。前職では、600名以上の介護事業所で、介護事業用ソフトの導入や契約の電子化、テレワークシステムの導入等に幅広くに携わる。2021年より、株式会社佐々木総研にて業務効率化のためのロボットや最新技術を活用した開発を行っている。