DXを進める中で、入力項目は確実に増えてきました。
営業日報や案件管理も、以前に比べると抜け漏れは減っています。
それにもかかわらず、なぜか判断は速くなりません。
むしろ「少し待ってください、確認します」といった場面が増えたように感じることさえあります。
現場にいると、この小さな違和感を耳にすることが増えました。
「とりあえず全部埋めておいてください」
「あとで使うかもしれないので入力しておいてください」
そんな言葉とともに、入力項目は少しずつ増えていきます。
気づけば、毎回ほぼ同じ内容を入力していたり、誰が見ているのか分からない項目が残っていたりします。
入力に時間を取られ、本来時間をかけたい商談準備や顧客対応が後ろに回ってしまうこともあります。
丁寧にやろうとすればするほど、少しずつ疲れがたまっていく。
そんな感覚が、現場には残ります。
一方で、「情報はできるだけ残しておきたい」と考える側の気持ちも理解できます。
過去の案件を振り返ったとき、
「あのとき、もう少し情報があれば」と感じる場面は確かにあります。
後から効いてくる情報があるのも事実です。
だからこそ、「取れるものは取っておこう」と考えるのは、とても自然な流れだと思います。
ただ、現場で起きていることを見ていると、少し違う姿も見えてきます。
増えているのは「データ」そのものというより、
「判断に使われないデータ」ではないでしょうか。
たとえば、失注理由を入力しているのに、次の提案改善には使われていない。
競合情報を入れているのに、価格判断や提案方針には反映されていない。
案件確度を更新しているのに、会議では結局「この案件は今どうなっていますか」と改めて確認される。
入力は増えているのに、それが「次に何をするか」という意思決定につながっていない。
ここに、判断が速くならない理由があります。
その結果、口頭で確認し直したり、個別のチャットで聞き返したり、会議で同じ説明が繰り返されたりします。
せっかく蓄積しているはずの情報が、別の形で何度も取り直されているのです。
少し引いて見ると、これは「入力の問題」というより、
「設計の問題」に近いのだと思います。
誰が、どのタイミングで、どの情報を見て、どのような判断をするのか。
この流れがはっきりしないまま「とりあえず集める」が先に進むと、データは増えても判断は速くなりません。
必要なのは、入力項目を増やすことそのものではなく、
入力された情報が判断に使われる流れを設計することです。
項目を増やしたくなる気持ちも、現場に少しずつ負担が積み重なっていく感覚も、どちらも自然なものです。
だからこそ必要なのは、どちらかを正すことではありません。
入力項目を増やす前に、まず問うべきことがあります。
「この情報は、いつ・誰の・どの判断に使われるのか」
この問いに答えられない項目は、データではなく、現場の負担になっている可能性があります。
遠回りに見えるかもしれません。
けれど、判断に使われる情報だけを丁寧に設計していくことが、結果的には一番負担の少ない進め方になるのだと思います。
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執筆者: 赤嶺 奈美(株式会社クロスディーズ プロジェクト進行統括マネジャー)
教育学部を卒業後、株式会社佐々木総研に税務課社員として入社。その後、総務課に異動し、請求業務や勤怠管理に携わる。2019年のICT活用推進課の発足時から所属し、社内文書の電子化やRPAの開発に取り組む。IT未経験から社内DXを推進した経験を活かし、現場視点での業務改善支援やローコードツール研修を担当している。
