最近、ニュースやインターネットで「生成AI」という言葉を耳にする機会が増えました。画像を自動で作成したり、文章を生成したりするこの技術は、一見すると魔法のようにも思えます。しかし、この生成AIは今、大きな転換期を迎えています。では、私たちは今後どのように生成AIと付き合っていけばよいのでしょうか。
まず、生成AIとは何かを簡単に説明します。生成AIは、人間が行うような創造的な作業を模倣する人工知能の一種です。例えば、文章の作成、絵画の生成、音楽の作曲などが挙げられます。これらは大量のデータを学習することで可能となり、最近では驚くほど高い精度で結果を出すことができます。
技術の流行には「ハイプ・サイクル」と呼ばれるものがあります。これは、新しい技術が登場してから広く普及するまでの流れを示したものです。一般的には以下の5つの段階があります。
- 黎明期:新技術が登場し、注目を集める。
- 期待のピーク期:過度な期待が高まり、実際以上の評価を受ける。
- 幻滅期:現実的な課題や限界が見えてきて、期待がしぼむ。
- 啓発期または回復期:技術の実用性が見直され、現実的な活用が進む。
- 安定期:技術が成熟し、社会に定着する。

(出所:ガートナージャパン株式会社)
現在、生成AIは「期待のピーク期」を過ぎ、「幻滅期」に入りつつあると言われています。これは、一部で過度な期待が先行し、実際の活用や成果がそれに追いついていないためです。
しかし、新たな動きもあります。2027年までに、生成AIの40%が「マルチモーダル化」すると予測されています。マルチモーダル生成AIとは、テキスト、画像、音声、動画など、複数のタイプのデータを同時に処理できるAIのことです。人間とAIのコミュニケーションがより自然になり、さまざまな分野での応用が期待できます。例えば、音声で指示を出して文章や画像を生成したり、画像を読み込んで説明文を作成したりすることが可能になります。
幻滅期に入ると聞くと、生成AIはもう終わりなのかと思われるかもしれません。しかし、これはむしろ技術が成熟に向かう過程でもあります。過度な期待が収まり、現実的な課題に取り組むことで、技術はさらに進化します。
今後は、より専門的な分野に特化した「ドメイン固有の生成AIモデル」や、人間の介入なしでタスクを遂行する「自律エージェント」といった技術が注目されています。これらは実用性が高く、ビジネスや日常生活に直接的な影響を与える可能性があります。
では、私たちは幻滅期以降も生成AIとどう関わっていけばよいのでしょうか。以下にいくつかのポイントを挙げます。
- 過度な期待を避け、現実を直視する:生成AIは万能ではありません。得意なことと不得意なことを理解し、適切に活用することが大切です。
- 学び続ける姿勢を持つ:技術の進化は早く、新しい情報が次々と出てきます。基本的な知識を身につけ、最新の動向にも目を向けましょう。
- 倫理的な側面を考える:生成AIにはデータの偏りやプライバシーの問題など、倫理的な課題もあります。技術の利用にあたっては、社会的な影響も考慮する必要があります。
- 創造性を活かす:AIが得意とする部分はAIに任せ、人間は人間にしかできない創造的な活動に集中することで、より豊かな成果を得ることができます。
生成AIは、私たちの生活や社会を大きく変える可能性を秘めた技術です。幻滅期に入ったからといって、その価値が失われるわけではありません。むしろ、これからが本当の意味での活用フェーズと言えるでしょう。
技術に振り回されるのではなく、正しく理解し、上手に付き合っていくことで、生成AIは私たちの強力なパートナーとなるはずです。これからの時代、生成AIとの共生を見据えて、一歩先を行く準備を始めてみてはいかがでしょうか。
参考サイト
ガートナージャパン株式会社 「Gartner、「生成AIのハイプ・サイクル:2024年」を発表 - 2027年までに生成AIソリューションの40%がマルチモーダルになると予測」
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20240910-genai-hc

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執筆者: 綾部 一雄(株式会社クロスディーズ 代表取締役)
ネットワーク維持管理、システム開発、ベンダー調整のスペシャリスト。前職では、600名以上の介護事業所で、介護事業用ソフトの導入や契約の電子化、テレワークシステムの導入等に幅広くに携わる。2021年より、株式会社佐々木総研にて業務効率化のためのロボットや最新技術を活用した開発を行っている。