最新AI O1の仕組みと応用
Softbank World 2024からの知見

はじめに

2024年もSoftbank Worldが開催され、DX(デジタルトランスフォーメーション)の最新技術やその展望について、多くの興味深い発表がありました。その中でも、孫正義氏が最新AI技術である”O1″について言及したことが特に注目を集めました。本コラムでは、孫正義氏の発言を基に、O1とその技術的アプローチについて解説し、わずか1年でのAI技術の急速な進化について初心者にもわかりやすく説明します。

 

O1と「思考の連鎖(Chain of Thought)」のアプローチ

O1は、GPTの後継技術として、より高度な推論能力を持つよう設計されています。通常のGPTモデルは、質問に対して直接答えを出すだけのシンプルなプロセスを持っていますが、O1ではより複雑な問題に対処するために「思考の連鎖(Chain of Thought, CoT)」という手法が導入されています。

「思考の連鎖」とは、問題を解決するために中間的なステップを生成し、それを使って最終的な答えにたどり着く方法です。具体例として、数学の文章問題を解く際には、まず必要な数字を整理し、その後に計算を行って答えを導き出すプロセスに似ています。このため、モデルはより複雑な問題にも対応でき、解答の精度を向上させることができます。

この技術は、特に数学的な問題や常識的な推論、記号操作などにおいて効果を発揮します。実際、Chain of Thoughtを利用したプロンプトは、従来のプロンプトと比較して、数学の文章題における正答率を大幅に向上させることが確認されています。

この技術の魅力的な点は、次の3つです。

 

  1. 問題の分解:複雑な問題を複数のステップに分解することで、AIがより多くの計算を行うことができ、より正確な解答を導き出せること。
  2. 解釈可能性の向上:AIがどのようにしてその答えに到達したのかを追跡できるため、解答のプロセスが理解しやすくなります。
  3. 幅広い応用性:数学問題だけでなく、常識推論や記号操作など、多様なタスクに適用可能であること。

 

初心者の方にも理解していただくために、「思考の連鎖」はまるで数学の問題を解くときに、まず問題を整理してから計算を始めるプロセスのようなものだと考えてください。このプロセスをAIに教えることで、より複雑な問題も効率的に解けるようになります。

Chain of Thoughtの技術は、AIが大規模なデータを処理するだけでなく、問題解決の過程を効率的に進める能力を持つことを示しています。

 

強化学習との組み合わせによる推論強化

強化学習とは、AIが試行錯誤を通じて最適な行動を学ぶ方法です。これを分かりやすく言うと、AIが自ら何度も繰り返し挑戦し、成功や失敗から学んで最善の行動を見つけ出すプロセスです。この技術は、まるで迷路を解く子どもが何度も道を間違えて、最終的に正しい道を覚えるようなものです。

強化学習は、ゲームのプレイ方法を学ぶのにもよく使われています。AIが何度もゲームをプレイし、その過程で得点を高めるためにどのように動けばよいかを学びます。この手法は、AIが新しい状況に遭遇しても、柔軟に対応できる力を養うことができます。

強化学習は、複雑な環境に適応しながら最適な行動を見つける際に有効です。この手法は、自動運転のように動的に変化する状況下での最適な判断を必要とする場面や、ロボットが未知の環境で効率的に動作するための学習に役立ちます。これにより、変化の激しい環境でも効率的な適応が可能になります。

 

思考の連鎖と強化学習の連携

「思考の連鎖(Chain of Thought)」と強化学習を組み合わせることで、AIはさらに強力な推論能力を持つことができます。「思考の連鎖」は問題を複数のステップに分解し、各ステップを通じて解答にたどり着く方法です。これに強化学習を加えることで、AIはその途中のステップを試行錯誤しながら学び、最も効果的な解決策を見つけることができるようになります。

たとえば、ある複雑な問題に対してAIが「思考の連鎖」を使って解決の手順を立てたとしても、その手順の中で最適な選択をするためには経験から学ぶ力が必要です。強化学習を組み合わせることで、AIはその手順を何度も繰り返し試し、成功や失敗から最も適切な行動を見つけることができます。

この連携により、AIは単なる計算処理にとどまらず、柔軟に学習し適応することで、より複雑で予測困難な問題に対応できるようになります。そのため、AIの応用可能性がさらに広がり、さまざまな分野での高度なタスクを効率的に解決する力を持つようになります。

 

おわりに

今回はSoftbank World 2024からの情報を元に、最新AIであるO1の原理について説明を行いました。AI技術の急速な進化は、私たちの生活に新たな可能性をもたらしています。これからも最新技術を積極的に学び、その恩恵を日常に取り入れていきましょう。

参考サイト

ソフトバンク株式会社「SoftBank World 2024」
https://www.softbank.jp/biz/events/softbank-world-2024/https://sbw.tm.softbank.jp/

Chain-of-Thought Prompting Elicits Reasoning in Large Language Models
https://arxiv.org/abs/2201.11903

Reinforcement learning
https://en.wikipedia.org/wiki/Reinforcement_learning

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執筆者: 綾部 一雄(株式会社クロスディーズ 代表取締役)

ネットワーク維持管理、システム開発、ベンダー調整のスペシャリスト。前職では、600名以上の介護事業所で、介護事業用ソフトの導入や契約の電子化、テレワークシステムの導入等に幅広くに携わる。2021年より、株式会社佐々木総研にて業務効率化のためのロボットや最新技術を活用した開発を行っている。